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タダ飯で労働力を確保する飲食店「未来食堂」

まかない

今回の事例はこちらから。

未来食堂は、あなたの希望に合わせておかずをあつらえる小さな定食屋です。また、未来食堂では珍しい本を閲覧できます。画集や写真集が多く揃います。

「飯代を自力で稼ぐ」を文字通り体現している未来食堂。飲食店の労働力確保が難しくなっている昨今、タダ飯を提供することで労働力を確保する、面白い取り組みを行っています。実際どのように運営されているのか、さっそく事例を見ていきましょう。

未来食堂とは

未来食堂は、日本IBMやクックパッドでエンジニアをしていた店主が立ち上げた神保町にある小さな食堂です。
「あつらえ」、「まかない」、「おすそ分け」という3つの独自システムを取り入れています。「あつらえ」は通常の定食にプラスして小鉢を選べるシステム。「おすそ分け」はタダで飲み物を持ち込めるかわりに、お店や他のお客さんにおすそ分けするというシステムです。
また、事業計画や開業までの取り組みを全てHP上で公開している一風変わった飲食店です。

「まかない」システムとは?

未来食堂の「まかない」は、50分間従業員として働くと、1食分無料で食べられるという仕組みです。タダ飯にありつきたい人は店頭にて手伝いを申し込みます。50分間、配膳や食器洗い、会計などの飲食店業務をおこないます。お手伝いが終了すると、対価としてまかないを食べることができます。
「えっ、実際に手伝いに来る人なんているの?」と疑問に思われるかもしれませんが、HPで公開されているカレンダーを見ると、2015年12月には60%以上のお手伝いさん(まかないさん)がきていました。

「まかない」制度を回すポイントは?

このまかない制度を回すためには、いくつかのポイントがあります。

①1人で回せるオペレーションを確立する
まかない制度では、いつ誰が手伝いに来てくれるか、店主が決めることはできません。まかないさんが来なくてもなんとかなるよう、1人でも回せるオペレーションを組む必要があります。まかないさんが来た時は彼らに仕事をまかせ、店主は新しいメニューの試作など普段できない仕事に時間を使います。

②完璧にマニュアル化する
まかないのオペレーションは細部までマニュアル化されています。食品を扱う以上、衛生面などは特に注意が必要です。まかないさん希望者には、事前にマニュアルを読んでくることを義務化しています。このマニュアルは公開されているので、誰でも見ることができます。

③継続的なリレーションでリピートしてもらう
まかない制度には、まかないさんに「もう一度働きたい!」と思ってもらうための工夫がいくつか用意されています。500円でお腹いっぱい食べられる「まかないさんありがとうの日」を設けたり、10回手伝うと1食分の食事券がもらえる特典をつけたり。継続的に来てもらうことができれば、労働力の安定的確保にもなり、また新人さんに教える手間も省けます。

「まかない」を支える店主の根本思想

いくらマニュアル化されているとはいえ、運用は簡単ではないでしょう。それでも「まかない」をやっているのは、「お金がなくても未来食堂に行けばなんとかなる。そんなセーフティーネットになりたい」というオーナーの熱い思いが根底にあるからなのだと思います。

まとめ

今回は、50分働くとタダ飯が食べられるお店、未来食堂の「まかない」をご紹介しました。従業員兼お客様というシステムは、労働力の新しい確保方法であると同時に、顧客との新たな繋がり方でもあります。飲食店を経営されている方、または考えている方は是非参考にしてみてはいかがでしょうか。

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